著者はイギリスの新聞「ガーディアン」紙のコラムニスト。
新聞だけでなく雑誌に寄稿したりテレビでコメントしたりと
仕事をこなし、当然平均以上の収入を得る50代女性です。
彼女に寄せられた企画が、
「40日間、時給820円という最低賃金で働く」というもの。
それは、家も衣服も家具も食料もほとんど持たず、
身一つで公的機関からお金を借りるところからスタート、という過酷なモノ。
(※全てはシミュレーションなので、実際には手当を受けたり借金をしたりして
税金を浪費したりはしていない。全て著者の懐から出している)
住むところは低賃金者向けの公共団地(のさらに最悪な住環境の棟)。
生活に必要なモノを買い集めたら手元にほとんど資金が無くなり、
職が見つかったら即休職者手当が打ち切られる(次の給料日までどうすればいいんだ)。
ハローワークにあたる施設や街角の求人チラシなどをもとに
著者はいくつかの職を40日間で転々とする。
病院内のポーター(車いすなどの運搬係)、
給食おばさん、外務省内の託児所、老人ホームの介護。。。
いずれの職も、働いている人たちは精一杯なのに
それに比べて賃金が不当に低い。最低賃金を切るものもある。
早朝、フルタイム、深夜の仕事を掛け持ちする人もいるし、
子供が学校に行っている昼間数時間しか働けない人もいる。
政府の方針は的外れで、経済学者の考える方針は
実際に低賃金で働く人たちの動きからかけ離れている。
結果の不平等は機会の不平等に繋がり、低賃金家庭に生まれ育った子供は
そのまま低賃金の仕事に就くことになる。
著者は、確かに切り詰めれば暮らしていけるかもしれないが、
映画を見に行くことも、カフェに立ち寄ることもできない人生が
満ち足りたものだろうか、と問いかける。
イギリスはこれからどのように進んでいけばよいのか。
私には、著者から投げかけられる数々の提案はとても妥当に見える。
そして、イギリスの姿は今後の日本の姿なんじゃないかとの
心配がちらりとかすめてしまう、興味深い本でした。
ハードワーク : 低賃金で働くということ / ポリー・トインビー著 ; 椋田直子訳||
ハード ワーク : テイチンギン デ ハタラク ト イウ コト
東洋経済新報社 , 2005.7 305p
名古屋所蔵